不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

課題(1):検索サイトごとに異なる入稿仕様

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 昨今、多くの検索サイトが乱立してきており、不動産業者としては手間も費用もかかってばかり、というのが本当のところです。物件広告は、出して終わりというものではないので、リアルタイムに更新しなければならず、どうしても不正確な情報になります。条件の変更、入居可能(入居中、空き予定、即)状況の変化、申込・成約取り下げ等々、様々なタイミングで更新する必要があります。繁忙期などは地獄です。

 この非効率な構造に目を付けて、問屋的な「データのコンバート業者」(いい生活、レンターズ等々)が登場し、無駄な階層構造を作って利益を得ている状況です。

 業界団体にいたっては、乱立しているからといって、自分達で統合サイトをやろうとして、過去の失敗にも学ばず、壮大なるお金の無駄遣いを続けています。

 特に、賃貸においては、いわゆる「仲介会社」が物件検索サイトへ大量に2次広告(先物物件)を出し集客して、(元付けの)「管理会社」にお客さんを紹介(客付け)する、というのが多くなっています。

 その結果、情報の鮮度や正確性の低下、アナログな電話やFAXによる空室確認の手間の増加、など別の弊害が爆発的に増大してきています。

 具体的に、複数の検索サイトに物件情報を公開・登録する方法として一般的なパターンを以下に4つ紹介します。 

パターン1.人力型(各サイトにログインして手入力)

f:id:reps:20150614184427p:plain

 

 基本のタイプですね。非効率極まりないです

 

パターン2.コンバート型(中間業者=コンバート業者=登録代行)

f:id:reps:20150614184434p:plain

 

 自社の業務ソフトから書きだしたCSVファイルを、中間業者がデータを変換(コンバート)して、各検索サイト向けにそれぞれCSVファイルを変換して、FTPで送信。

 こんなの、技術的にもデータベースの中身をCSV形式でFTP使ってブン投げているだけなので、処理も重たいし、大変な非効率です。インターネットに相応しくないです。 中間業者が入りますので費用も掛かります。

 

パターン3.テンプレ型(検索サイト間借り)

f:id:reps:20150614184442p:plain

  一つの検索サイトに完全に全部依存してしまいますね。おススメしません。

 

パターン4.乗っかり型(管理システム全委託)

f:id:reps:20150614184449p:plain

 力技の丸投げ依存の高コスト体質ですね。自社が使う業務ソフト(物件管理システム)が、各物件検索サイト向けに、データをそれぞれ加工して、コンバート型と同じFTPCSVを投げている。一つの業務システムに完全依存する形で、それが内部でコンバート掛けている。非効率極まりないですね。

 これ、管理システムを開発しているソフトウェアエンジニアの人達も、内心はなんで個別のサイトごとに一々糞みたいな仕様に合わせて変換をかけなきゃいけないんだよ、アホじゃないの?と思っているはずです。(当然、彼らはそれで飯を食っている訳で、決して表立って公言することは無いでしょうが)

 

の4パターンと、その派生型、混合型となります。

 細かいことを言うと、FAX入稿や、図面出稿のオプションで、みたいのもありますけれども。

 

まとめ

 混沌としてます。やり方も原始的で手入力や、力業でコンバートするのも非効率です。コンバート業者にお金を払って、というのも後ろ向きで非効率の極みです。

 解決方法は、APIを使って自動化する事です。後述します。

 

次回は、慣行と慣習と規制についてです。

 

海外事情(1):MLSとは何か

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 アメリカに、Multiple Listing Service(MLS)という不動産物件情報データベースによる物件情報の共有・連携システムがあります。これは、業者間流通の項でもふれた互恵関係に基づく不動産業者の集まりによって、自主的に物件情報の流通を促進する為に設立されたものです。

 ちょっとカジッた人にMLSの話をさせると、すぐレインズと関連付けて、あれやこれやと勝手に解釈して結論付けるので、本当に面倒です。「日本にはレインズがある」などと、ズレた事を仰いますが、レインズを使った事があるのでしょうか。むしろ「日本にはレインズが」という念仏を唱えて思考停止しているだけの気がします。

 レインズの事情はなんども触れましたが、比較の対象にもなりません。レインズとMLSの根源的な違いは、アメリカのMLSはその意義を認めた民間が主体でやっていて、日本のレインズはお上が法的に義務付けたので設置している、という違い。なのでレインズは市場の原理が働かず、事務的にやっているだけなので、発足以来、死に体のままなのです。

 あと、何故か日本では「MLSは物件情報を一般にも公開している」とかいう話しが出回っているようですが、そんな事はありませんし(参加業者のサイト経由で見る事は出来るが元データはMLSにある - IDXの項を参照)。

 ここでは海外のシステムをそっくりそのまま真似するのが良いといっているのではありません。各国の事情法律慣習に合わせて考えるべきなのは当然です。見て欲しいのは、使われているテクノロジーもですが、これから紹介するその本質と米国不動産業界のテクノロジーに対する姿勢です。

Multiple Listing Service(MLS)とは何か

「全米不動産協会(NAR)」が主導して、物件情報の流通を推進している、MLSと関連する技術仕様を簡単に翻訳して紹介します。

 

National Association of Realtors (NAR)

www.realtor.org/
 

 NARのサイトの説明が以下の通りです。

 

 Multiple Listing Service (MLS): What Is It

Multiple Listing Service(MLS)とは何か

 

REALTORS® have spent millions of dollars to develop Multiple Listing Services (MLS) and other real estate technologies that make the transaction more efficient. An MLS is a private offer of cooperation and compensation by listing brokers to other real estate brokers.

NAR会員である不動産業者(REALTORS® )は、MLSのみならず、その他の不動産技術にも、不動産取引を効率よく行う為に巨額の投資を行ってきました。MLSは情報を公開する不動産業者とその他の不動産業者同士の協力と報酬を提供するものです。

In the late 1800s, real estate brokers regularly gathered at the offices of their local associations to share information about properties they were trying to sell. They agreed to compensate other brokers who helped sell those properties, and the first MLS was born, based on a fundamental principal that's unique to organized real estate: Help me sell my inventory and I'll help you sell yours.

1800年代後半、不動産業者は近くの協会事務所に定期的に集まり、売りたい物件情報を交換し合っていました。売るのに協力してくれた他の業者に報酬を分けることに同意がなされ、これを基本的な指針としてMLSが生まれました。私の在庫を売るのを手伝ってください、私もあなたの在庫を売るのを手伝います。

Today, through more than 800 MLSs, brokers share information on properties they have listed and invite other brokers to cooperate in their sale in exchange for compensation if they produce the buyer. Sellers benefit by increased exposure to their property. Buyers benefit because they can obtain information about all MLS-listed properties while working with only one broker.

今日、800以上のMLSが存在し、業者は情報を共有し、他の業者と売却の協力を持ちかけています。売主は売り情報の流通露出というメリットがあり、買い手としては1業者からMLSに登録されている多くの情報を得ることが出来ます。

The real estate market is competitive, and the business is unique in that competitors must also cooperate with each other to ensure a successful transaction. MLS systems facilitate that cooperation.

不動産市場は、市場競争のありながら、成果を得るためには競合相手と協業するというユニークなものとなっています。MLSはそのシステムを提供します。

The MLS is a tool to help listing brokers find cooperative brokers working with buyers to help sell their clients' homes. Without the collaborative incentive of the existing MLS, brokers would create their own separate systems of cooperation, fragmenting rather than consolidating property information.

MLSは、物件を売りたい顧客のいる業者が、協力業者を探すツールです。協力と報酬というものがなければ、MLSではなく、業者は好き勝手に独自の協力体制を作り、物件情報は断面化、分断し、フラグメンテーションを起こします。

MLSs are a powerful force for competition. They level the playing field so that the smallest brokerage in town can compete with the biggest multi-state firm. Buyers and sellers can work with the professional of their choice, confident that they have access to the largest pool of properties for sale in the marketplace.

MLSは強みとなります。小さな街の不動産会社が、全国レベルの大企業と競合できるのです。売り手と買い手は、業者を選択し、その業者が確かな巨大マーケットにアクセスすることが出来るという安心を与えます。

Real estate information on the Internet is readily available. Consumers can access and view all publicly available listing information on the Web site of their broker of choice.

インターネットにも不動産情報は公開できます。消費者は参加業者のサイト上で、公開可能な物件を閲覧することができます。

MLSs are private databases that are created, maintained and paid for by real estate professionals to help their clients buy and sell property. In most cases, access to information from MLS listings is provided to the public free-of-charge by participating brokers. Data that is not publicly accessible includes information that would endanger sellers' privacy or safety, such as seller contact information and times the home is vacant for showings.

MLSはプライベートなデータベースで、不動産業者たちによって作成(支払われ維持運営)され、顧客たちの物件を売り買いする助けにしています。ほとんどの場合、情報へのアクセスは参加している業者に無料で提供されます。非公開にされる情報は売り手のプライバシーや安全を損なう情報です。たとえば、売り手のコンタクト情報や空室になる時期などです。

NAR encourages innovation and competition in real estate brokerage, including different business models. NAR members are affiliated with real estate brokerage firms that operate using various business models, including full service, limited service, fee-for-service, and discount (regardless of the level of service). Internet positioning in itself is not a business model - nearly 90 percent of REALTORS® report that their firm has a Web site for business use, according to the 2007 NAR Member Profile.

NARは、ビジネスモデルの違いも含め不動産取引のイノベーションコンペティションを推進します。

According to the 2007 REALTOR® Technology Survey, two-thirds of all REALTORS® have Web sites, and REALTORS® report that their listings are displayed on any number of Web sites, including REALTOR.com, the REALTOR®'s own site, the local REALTOR® association's Web site, the local newspaper site, Yahoo, Google, CraigsList, Zillow and Trulia.

2007年の調査によると、3分の2の業者がウェブサイトを持ち、物件情報は多数のウェブサイトに掲載され、REALTOR.comや業者の自社ウェブサイト、地域の業界団体協会サイト、新聞紙のサイト、Yahoo、Google、クレイグリスト、ZillowやTruliaなどにも掲載されています。

More than half of recent buyers used MLS Web sites in their search, according to the 2007 NAR Profile of Home Buyers and Sellers.

調査によると、半分以上の買い手がMLSウェブサイトを検索に利用していることも明らかになっています。

 

http://www.realtor.org/topics/nar-doj-settlement/multiple-listing-service-mls-what-is-it

 

*好きで暇で書いているとはいえ、わざわざ日本語訳するのは疲れます。もういい歳なんで。面倒なので読みながら一気に直訳調で翻訳しながらタイプしているので、誤字脱字誤訳指摘歓迎。

 

 この沢山あるMLSが横同士で連携している状態。

 

Internet Data Exchange(IDX)とは何か

Internet Data Exchange (IDX) Background and FAQ

Q 1. What is Internet Data Exchange?

IDX(インターネット・データ・エクスチェンジ)とは?

A. Internet Data Exchange ("IDX"), also referred to as "Broker Reciprocity," is the next stage in the evolution of MLS as the primary means of enhancing cooperation between REALTORS® to facilitate the purchase and sale of real property. IDX gives MLS Participants the ability to authorize limited electronic display of their listings by other Participants. Under IDX, brokers exchange consent to display each other’s listings on participants’ websites and using applications for mobile devices that participants control.

IDXは業者同士の互恵関係とも言われ、MLSの進化の次のステージとして業者同士の協力を推し進める主要なものとなります。IDXは、MLS参加業者に、承認された制限のある電子的表示を、別の参加業者に許諾する手段を提供します。IDX利用において、業者はお互いに表示(掲載公開)する同意を与えあうことが出来ます。

Q 4. Do I have to allow other Participants to include my listings in IDX displays?

他の参加業者にIDXを通して表示させなければならないのですか?

A. No, Participants are free to withhold authority for such display - either on a blanket or on a listing-by-listing basis as instructed by the seller.

いいえ、表示を許可するかしないかは自由です。まったくしないのも、売主の意向に沿って物件毎に指定することも出来ます。

 

http://www.realtor.org/topics/internet-data-exchange-idx/internet-data-exchange-idx-background-and-faq

 

 このIDXというポリシー(ルールとツール)によって、MLSのデータを自社のウェブサイトに埋め込んで検索させることも出来たりします。ですから、MLSで物件情報の取り下げ(非公開)があれば、自動的にその物件情報はすべて取り下げられますから、情報の鮮度と正確性は保たれます。

 

 そして、初めからずっと紹介したかった、本命のRETSというものが出てきます。

 次回、本命のRETSとは何か、より詳しく説明します。

 

技術要素(2):XML WebサービスAPI

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XMLを用いたWebサービスAPI

 前回の3大原則を前提として、 不動産情報流通IT化に必要な技術要素を見ていきます。

 不動産物件情報の流通における特徴は、

 インターネットに公開した物件情報は、申込時点で募集を取り下げないと「おとり広告」となってしまいます。そのため、情報の流れをコントロール出来なければならない。つまり一次情報の発信元が情報を更新したならば、2次3次情報公開者も遅滞なく更新された情報を反映させなければならない義務が発生するのです。(不動産の公正競争規約

 勝手に出回ってしまっては発信元も責任を問われる可能性が出てくるし、利用者にも不利益となります。なので、そういった意味でも物件情報の2次利用は勝手におこなってはならないという前提があります。元々無断転載、無断2次広告はダメです。空室確認せずに放置もだめです。

 しかし、そんな事をいちいちちゃんとやっていたら、ひたすらFAXと電話で物件確認をし続けなくてはなりません。ありえません。これに関しては、テクノロジー的な課題でも障壁でもなく、逆に(正確性、リアルタイム性などなどは)ITを使って解決できる問題なのであります。

課題(1):慣行と慣習と規制 - 不動産情報流通IT化の覚え書き

 

 というものです。これを、一々電話で確認した上で、手動で公開・非公開やったり、各物件検索サイトのシステムの独自仕様に合わせてデータを丸ごとCSVで送信したり、またはデータ変換業者を通したり、という現在の状況超がつくほど前近代的です。

ありえないレベルです。

では、どうするか、というとAPIを使います。

WebサービスAPI

 APIとは何か、というのはAPIWebサービスで検索して頂ければ山ほど情報が出てくるので調べて頂くとして、異なるシステム同士で連携する仕組みです。つまり、システムの一部の機能を切り出して、外から利用できるようにする、という意味合いがあります。

 これにより、あるシステムがAPIで他のシステムの機能を利用したり、そこのデータを取得したり新たに登録したりできます。

 実は、今使っているこのブログでもAPIが利用できます。ここに限らずどのブログでもブログ投稿APIに対応していて、様々なツールと連携してブログを投稿する事が出来るようになっています。例えば、あるブログ投稿ツールを利用して、Aブログに投稿し、Bブログに投稿、という事が出来ます。APIが共通で標準化されているからです。ブログAPIの場合、有機的に広まってデファクトスタンダードが普及したXML-RPCタイプと、IETFという標準化団体により標準化されたより汎用的な「出版プロトコル」である、Atom Publishing Protocolという二つのAPIが利用されています。

 *技術的な詳細に触れると、APIには主に二つの形式があり、RPCタイプとRESTタイプに分かれます。RESTはよりインターネットネイティブと言える方法で、この方法が現在主流となっています。RESTな(RESTfullと言います)APIは、ブラウザと同じで、あるURIに対してGET、つまりこのIDのリソース(HTMLページとかXMLファイルとか画像ファイルとか)をくださいな、とすると、取得できたりします。POSTでリソースを追加・登録です。このIDのリソースを削除してくださいな、という場合はDELETEで、更新はPUTです。CSVでデータベース丸ごとダンプしてFTPでファイル転送するような野蛮な方式とくらべて、なんとシンプルで美しい方法ではありませんか。

 CSV形式で一々各社の仕様に合わせて変換(コンバート)して、データを丸ごとドーンと送信するような前近代的で非効率極まりないやり方は、もう辞めましょう。

XMLフォーマット

 APIでシステム間の相互連携が出来る、という事ですが、データの形式はどうなるか、というとXML形式で記述したものを使います。

 XMLはデータフォーマットを定義して利用する為の標準規格で、ありとあらゆる所に使われています。ワードなどの文書ファイルも中身はXMLフォーマット、アプリの画面設計のフォーマット。100%間違いなく、誰もが一日に一度はXMLを利用した技術を使っているはずです。金融業界を含む各種業界で、標準データフォーマットとして利用されているのです。

 具体的な例としては、金融・会計・財務関連の国際標準フォーマットとして、XBRLというのが標準化されています。これは2000年代初期には既にあった記憶があります。

XBRL(eXtensible Business Reporting Language)は、各種事業報告用の情報(財務・経営・投資などの様々な情報)を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースのコンピュータ言語です。特に、組織における財務情報・開示情報(財務諸表や内部報告など)の記述に適しています。
たとえば財務情報は、年度ごと、あるいは組織や業種ごとに、文書構造や項目、計算式などが異なるといった特徴があります。このため、従来の作成方式では作成コストがかかるだけでなく、共通化二次利用が困難です。XBRLを用いることにより、ソフトウェアやプラットフォームの壁を越えて、電子的な事業報告の作成や流通・再利用を容易に行うことが可能になります。その結果として、企業、会計専門家、監督機関、アナリスト、投資家、資本市場参加者、ソフトウェアベンダー、情報ベンダーなど、財務情報のサプライチェーンに関係するすべての当事者に、財務情報を取り扱うためのコストを削減させ、より正確でスピーディーな情報処理が可能となります。特にインターネット上に公開されている財務情報については、データの精度が向上するだけでなく、他のコンピュータシステムでの再利用が容易になることにより、その価値が飛躍的に高まるという効用もあります
このようなメリットを実現するキーとなっているのは、「標準化」ですXBRLの普及の中心的役割を担っているのは、XBRL Internationalという非営利の世界的なコンソーシアムであり、IFRS国際財務報告基準)を策定しているIASB(International Accounting Standards Board)をはじめ、財務情報サプライチェーンに関係する各種企業・団体がそのメンバーとなり、XBRLの標準化と普及を全世界レベルで強力に推し進めています。会計基準ではIFRSを自国の会計基準として採用する国が急速に広まっていますが、財務諸表を中心とする財務情報の作成・流通・利用を可能とする技術は全世界でもXBRLをおいて他にはなく、世界中の関心が確実に高まっています。

一般社団法人 XBRL Japan - XBRL Japan Inc. - XBRLとは

 XMLは、標準フォーマットを定めるのに最適で、名前空間」というシステムを利用して、標準規格のフォーマットに独自の拡張を施す事も可能ですから、非常に柔軟性があります。また、XMLスキーマ定義を利用し、データの項目がちゃんとあるか、といった定義に即したデータであるかの確認が簡単に出来るようになっています。このスキーマ定義が仕様書としても機能し、異なるシステム間での利用に用いられます。

 名前空間の拡張により、自社の独自項目を追加しても、なんの問題もなく他社システムとの連携を取る事が可能になるのです。殆どの方はこの事実を知らないで、「標準化など無理」などと言います。単に、XMLの事を知らないからそういう事を言ってしまうに過ぎません。

 因みに、中にはJSON形式を使わないのか、と言う人もいるかもしれませんが、JSONは元々JavaScriptネイティブのデータフォーマットで、ブラウザの要素を一部書き換える為のデータフォーマットとして、小粒なデータをブラウザ内のJavaScriptがサーバとやり取りしたりするのに主に利用されており、その用途で最適なものであって、不動産物件情報の流通、といった汎用的な業界標準フォーマット用途には、XMLの方が向いている、と個人的には思います。まぁ、XML形式とJSON形式は、両方ともライブラリが揃っているので出入力に両方対応させるコストは微々たるもので、両方対応すれば良いに越したことはないです。

 このようにして、物件検索サイト側が、データ入稿にXMLAPIに対応さえすれば、業務ソフト(自社で使う物件管理システム)から、効率的に物件情報の流れがコントロールできるようになります。

 ポイントは、このAPIXMLフォーマットは、一企業の独自仕様ではいけない、という事です。業界団体なりが策定すべきものです。

EDIという用語について

EDI、つまり、 電子データ交換という表現が未だに官公庁をはじめとして使われている実態がありますが、「電子データ交換」がインターネット上に移行した現在ではもはや最も適切な表現とも言えないのではないでしょうか。

というのも、元々インターネットが登場する前からEDIというのがあって、Point-to-Pointまたは直接接続、つまりシステム同士がインターネットを経由せずに接続されるものも指す事があります。これは、前にのべた三原則にも反する事で、閉じたネットワークは使うべきではありません。EDIという言葉が使われている業種や分野はそうした過去の歴史上の経緯から、慣習的に使われ続けているにすぎません。

英語圏でも、もはやEDIなんて言い方はもはや一般にしませんし、「電子データ交換」はとっくにインターネットに移行し、いまや「電子データ交換」に相当するのは普通に「ウェブサービス」ということが多いです。

不動産ID

 不動産IDは、XMLAPIとちょっと違うレイヤーの話しですが、必要と言えるでしょう。ただし、無くてもWebサービスAPIは運用可能です。

 現在、物件情報で、個別の物件を一意に識別する確実な方法はありません。つまり、A社が登録した「XXXマンション」と、B社が登録した「XXXマンション」は同じ建物の物件なのか分からないという事です。一般媒介物件だと複数の元付け会社から物件情報が回ってきますから、識別できた方が良いです。仲介先物を流す業者もいますし。

 物件の住所で分かるではないか、というのは素人の考えで(私も不動産業に入ってから知ったのですが)厄介なもので、日本では様々な表記が存在し、単なる「表記揺れ」だけにとどまらず、平たく言うと登記簿上の所在地と郵便配達用の住所、地番と住居表示という2種類が存在してたりします。名簿のような「名寄せ」で特定も確実ではなくアナログ処理バリバリで難しい所があります。

 登記簿謄本にある「不動産番号」を使えば良いのでは、と思ったりしましたが、登記簿情報を識別するIDを流用するのは色々とスッキリしない点があります。区分所有の建物じゃないと、部屋ごとに番号付かないし、土地も一筆単位だったりするし・・と。

 という訳で、不動産IDが新たに出来ると、業者間で物件情報をデジタルでやり取りする際に、住所や物件名の表記揺れに関わらず、どの物件情報なのかを特定する事が出来ます。(<出来ると、1つのデータにまとめたり、表示を整理できます)

 2021年現在、不動産番号に部屋番号を付記したものを不動産IDとする、というような話しが出ているようですが、協会や国交省など、公的な所からは正式に何もないので、どうなんでしょうかね。

 

標準化に関する誤解

 標準規格とか標準データフォーマットとか、標準化、という言葉を使ってきましたが、一般的にはなじみがない言葉のようで、不動産関係の方などから、ビックリするようなものすごい誤解を受けることもあるので、触れておきたいと思います。

 まず、間違っても「物件名称」とか「物件名」とかの用語の統一を図るものでは無いので誤解をしないで欲しい、という事です。大昔(10数年前)、不動産流通近代化センターの天下り事務局の某が、「『物件名称』とか『物件名』とか様々なので、標準化などは出来ない」という発言をしたのですが、基本の勘違いですね。頭が痛くなります。いや、当時、会合にオブザーバー参加していたので、実際に頭痛がしました。

 個々の企業やサービスが、「物件名称」という表現を用いていようが、「物件名」としていようが、全然構わないのです。標準化とは、「物件名称」を用いているシステムと、「物件名」を用いているシステムが、同じ共通言語でデータをやり取りできるようにするための中間フォーマットを作る、という話しです。

 

標準化とは?
標準化とは、異なるメーカの製品間で相互運用を可能とするため、業界内で統一規格を作成する取組みです。モバイル通信の世界では、周波数、無線技術、通信手順や信号インターフェースなどを統一化する取組みが該当します。

その結果、世界中の端末が各国のネットワークに繋がり、モバイル通信が可能となります。また、同じ規格の製品が世界各国で採用される事で、端末や装置が共通化でき、価格が“低廉化”することが期待されます。

ドコモの標準化への取組み

  

 これは、関連するベンダー(機器の製造業者であったりソフトウェアの開発業者であったり)や業界団体が、自主的に業界発展の為に、協力しあって自主的に標準化団体を作って活動するものです。

 なので標準化団体というのはどの業界にもあって、前述の、金融・会計・財務関連の国際標準フォーマットとして、XBRLだけではなく、各種業界の各用途向けに様々存在しています。

 日本の不動産業界では、残念な事に機能している標準化団体は存在していません。

 

次回からは、海外の事例を紹介していきます。

 

技術要素(1):3大原則

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3大原則

不動産物件情報流通IT化における技術的仕様の3大原則は、

 

1.インターネット
2.オープンスタンダード
3.ベンダー独立・非依存

 

であるべきです。

 一つ一つ見ていきます。

1.インターネット(WWWでありHTTPを使う)

 当たり前すぎる話しですが、念のため。

 決して、FAX入稿とか、CSV(コンマ区切りデータ)ファイルを書き出して、FTP(ファイル転送)とか有り得ないから、考えるのもやめて欲しい・・・と思うのが当たりですが、実際の所、各物件検索サイトへのデータ入稿は、一々手入力か、またはCSVファイルにダンプしてFTPで送っているだけなのが実態です。(いや今の時代、普通にHTTPでXML使えよ、みたいな)

 また、初期のEDIのような、専用回線で直接やり取りするような閉じたネットワークで行う、というのは物件情報流通を促進するのにある意味逆行する話しであり、広くインターネットで参加者を排除しないネットワークであるべきです。

2.非プロプラエタリー規格(オープンスタンダード)

  ウェブ開発の大原則。オープンな標準規格を策定する。独自規格は使わない。

 CSVで、行の順番次第とか、項目のデータ形式が各社異なる、とかそういうのではなく、業界統一のオープンな標準規格でなければなりません。 

 特定企業のソフトウェアやシステムのデータ形式を強制させるのは論外、という事です。

 IEでしか閲覧できないサイト、Windows(プラットフォーム)でしか使えないActiveXの埋め込みサイト、ドコモの携帯でしか見られない「i-mode」それらは、死に行く運命。それは、World WideなWebでなく、オレオレNetのオレ様ネットワーク。インターネットではない。W3Cの仕様と規格と原則に則った、インターネットであるべきです。

(ええ、2021年になってやっとIE限定が解消されたレインズの事ですよ、レインズ)

 データ形式についても、特定のベンダー(製造業者)の権利のあるソフトウェアでないと、編集できないデータ形式は論外。たとえば、マイクロソフト社の表計算ソフトのエクセルでないと編集できないデータ形式など。

 例えマイクロソフトがなくなっても大丈夫な仕様にすべき。あくまでも仕様はプラットフォームから独立したものでなければならない、ということ。

 

 プロプライエタリ(ぷろぷらいえたり)

 開発者・開発企業などが製品やシステムの仕様や規格、構造、技術を独占的に保持し、情報を公開していないこと。その情報独占者でなければ、開発・修正・改編・管理ができない状態となる。

 プロプライエタリ(proprietary)は「専用の」「独自の」「独占的な」「所有権・占有権のある」「非公開の」の意味で、コンピュータ関連用語としてはオープン(open)の対義語となる。

 標準化の進んだパソコン(クライアント/サーバ・システム、Webシステム)によるシステムを「オープン・システム」と呼ぶとき、メインフレーム・システムのように特定メーカーなどによる特定の独自仕様によって構成されたコンピュータ・システムを「プロプライエタリ・システム」という。

 また、Linuxに代表されるソースコードが公開されたソフトウェアを「オープンソース・ソフトウェア」「フリー・ソフトウェア」というのに対して、WindowsMac OSのようにソフトウェアメーカーがソースコード知的所有権)を独占あるいは占有しているソフトは「プロプライエタリ・ソフト」と呼ばれる。

 

3.ベンダー独立・非依存

  日本固有の悪習であるITゼネコンに丸投げして依存、と言った事は論外です。

 なにしろ、日本のITゼネコンSIer)は、NTTデータや日立なんとかと言った、一定以上の年齢層には効果てきめんの名前を使った子会社を利用して、業界団体に取り入って、素人でも作れるようなサイトを自分達では一切作りもせず、下請けのさらに孫請けなどに丸投げし、相手がIT分からない層だからといって、いいようにお金を吸い上げてポイするような吸血鬼のような存在だったからです。

 この件については書きたい事は山ほどありますが、また別の機会に。

 

 次回は、不動産XMLとAPI、そして不動産IDの話しです。

 

課題(3):不動産業界団体の問題

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 初めのエントリで紹介した、業界団体系の物件検索サイト、レインズはもとより、ハトマークサイト、ハトマークネット、 ハトさんの問題。

 個人レベルからの宅建業者の集まりである業界団体が、一つのウェブサイトを運営するというだけでどういうシステムやサイトが出来上がるか、というのは簡単に想像がつきます。

 そもそも業界団体の委員会などが一般向けのサービスを運営するなど、はなから止めるべきです。

 何をどんな風にどんな相手に、という流れを一つのサービスに落とし込んでいく上で、無数の決定事項、使いやすい使いにくいという汎用性と個人性が混濁しやすい部分での決定権、リーダーシップ、そういったものは団体的作業では不可能に近いのです。責任とリーダーシップ不在の団体からは、無難なものしか生まれない運命です。

 一つの製品デザインや、動物のしつけ、そういったものは、みんなでやるべきことではないのです。アップルのスティーブ・ジョブスのように分かっている人間が独裁的なデザイナーとして、プロダクトの絶対的かつ唯一の決定権をもって芸術家の作品のような一貫した完成度をもたせた製品やサービスが良いのです。動物の調教たとえば馬だったり犬だったりも、別々の調教師が口をだして別々のことを言ったら混乱します。一人が一貫した正しい態度を貫くべきなのです。

 行政、官僚、政治というものは、人・物・お金などの流通の、「規制と基盤整備」を行うのが仕事であって、民間のベンチャーがやるような事に手を出してはいけません。失敗する運命にあります。

 業界団体(特に、東京都不動産協同組合)も、一般向けの物件検索サイト「ハトさん(ハトマーク東京不動産)」の開発運営やら、物件管理ソフトやら間取り図ソフト開発など、自由な民間の市場ですでに活発に行われているソフトウェアやサービスを、わざわざあえて団体組織が2番煎じのサービス開発に無駄金を投じるべきではないのです、そもそも。

 しかも、特定のソフトウェアシステムを会員に使わせようとするのは完全に間違っています。独占による多様性を奪うと市場の原理が働かず、そのソフトウェアの進歩(改善)が無くなります。利用者の不利益に繋がるのです。ソフトウェアの世界に限らず、当たり前の基本的な話しです。

 つまり、団体が自ら開発運営して、それを会員に使わせよう、というのは2重に間違っている、という事なのです。そんな事がこの10数年間、目の前で繰り広げられてきたのを目の当たりにして、私は一人で頭を掻きむしるような状態でした。結果は案の定、です。

 行うべきなのは、不動産物件情報流通のグランドデザインと標準規格の策定、つまり「基盤整備」です。こればかりは、民間では出来ません、やりたがらないのです。民間は自社で市場独占を目指します。営利企業ですから。民間にまかせた独占の結果は利用者の不利益です。

 基盤整備が出来ていない混沌とした環境ではルールもなく、エコシステムの発達もあり得ません。そこの環境を整備・ルール作りをするのが、本来の業界団体の仕事なのです。具体的なソフトウェアやサービスを作るべきでは決してありません。つまり、情報流通の標準規格を制定・策定すべきなのです。

 民間はその標準規格に合わせて、市場の原理でより良いシステムを開発していくでしょう。そして不動産業者は、各々の事情に合わせたシステムを自由に選んで利用する事ができるようになります。

具体的には後述します。

 

すべきでないこと

1.ITゼネコンに丸投げ

 その昔、良く分からない不動産業界団体の役員さん達が、日立なんとかとかNTTデータなんとかとかNTTコミュニケーションズといった、いわゆるITゼネコンに取り入れられて、ITゼネコンの口車にのせられてウン億円単位のお金を費やして、結果ろくなものが何も出来なかった、という大失敗をしたのはこの業界では一部で有名な話し

 ITゼネコンなんて、自分じゃ何も作る事の出来ない技術力ゼロの下請け丸投げ天引き屋さんなんだけど、知らない人にとってみれば、責任も含めて丸投げできるから楽なんでしょうね。

2.開発運営を自ら行うこと

 ITゼネコンにしてやられたからと言って、団体自ら開発運営をやろうとした時期があります(笑)。

 業界団体の会員向けに、一つ同じシステムを使わせようと自ら開発に関わる事もダメダメです。まず第一に、1つのもの使う事を推薦という形で強制させるのがダメダメ。

 過去、賃貸業務システムと間取り図ソフトを宅建協会の協同組合が参画して採用する動きがあったのですが、失敗するのは見え見えでした。

 たとえば、いくらLinuxが無料だからといって、みんなにLinux使えって言ったって、使いたくない人だっているでしょう?ブラウザだって、色々な種類があって、ChromeFirefox等々、好きなのを使えるのが当然です。大事なのは、ウェブページの規格を統一しているので、好きなブラウザでも見れる事。つまり、標準規格を定める事です。

3.検索サイトを自前で作ること。

 民間事業者と同じことをして張り合うのは業界団体の役割では無いはずですし、できません。業界団体とは言え、しょせん烏合の衆。

  東京都不動産協同組合が作ったアレやコレの話しですよ。説明会にも参加しましたけれど、クラウドクラウド連呼するのは良いけれど、なぜに顧客管理システムであるセールスフォースのCRMを無理やり物件管理システムにカスタマイズするとかいうアホな提案に乗ってしまったのか・・・

 ハトマークのサイトとかの話しです、はい。ハトさん(ハトマーク東京不動産)とか。予想通り、閑古鳥が鳴いて大失敗です。

4.特定の物件検索サイト事業者に頼ること。

 情報流通の非効率性=物件検索サイト及びコンバート事業者の利益、という構図を 忘れてはいけません。なので、情報流通のIT化と効率化、という案件でアットホームやリクルートのスーモ、ホームズに意見を聞くべきではありません。絶対に反対するからです。自らの情報の囲い込みと、非効率性から利益を得てそれを追求するのが立場であって、不動産業者とは、ある意味利害が対立しているからです。

 現状では、アットホームなど、既存の検索サイト運営事業者や、広告代理店みたいなのや、大手ITゼネコンに丸投げ委託、たとえばハトマークネットなどは、業界団体のサイトではりながら、なぜかログインするとアットホームのドメインで運用されていたりします。これ、そもそも公正取引に違反しないのか?と。特定の営利企業に、業界全部の情報が行く形になってしまっていたり・・・。

 いずれにせよ、とても異常な状態です。

 

次回は、不動産物件情報をIT化する上での3大原則の話しです。

 

課題(2):ITリテラシーと悪質業者

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不動産業界のITリテラシー

 世の中には、まだまだ、パソコンに慣れない人たちは多いようです。みながパソコンを日常的に使うわけではないのが日本の現状。あまり学校に行かなかった人たち。ずっとガラケーで来た人たち。スマホしか触った事のない若い人達。

 いわゆる、駅前の小さな不動産屋のおじちゃん、おばちゃんの店。インターネットなど不要でやってきたし、これからも不要という人達。

 それはそれで構わないです。まったく問題ない

 問題は、それを言い訳に業界全体でIT化が放置されていて発展が無いことなのです。「初心者にも分かり易いように」この一言は「普通の人には使いにくいように」と言うのと同義語です。 

 パソコンを使えない宅建業者の社長がいるから、業界としてもIT化出来ませんとか、ジョークみたいない話しは、他でやってください。アルバイトを雇ってもらうか、入力代行業者さんを利用してもらえばよい話しであって、現状でもアットホームや協会さんの側で紙の図面から物件情報を入稿する手段は様々存在しています。

 パソコン使えない人が居るから・・・という言い訳は耳がタコになるくらい聞きました。じゃぁ、階段が使えない人がいるから、階段を一切作らないのか?と。アホかと。

ハンコと電子契約

 今注目の、ハンコの問題と電子契約について触れておきましょう。一言で言うと、別に電子契約ができるようになっても何も変わらない、です。
 なぜか。不動産屋さんに言わせると、「電子契約で紙とFAXが不動産業務から無くなると思ってるのが居たら相当おめでたい奴だな。電子契約できるようになったからと言って、電話と手入力の手間が減る訳でも無しに」と馬鹿にされてお終いです。
 良く分かります。日本において、いや世界において、紙による契約書は当分無くならないでしょう。業者間の契約が電子化で統一されたとしても、一般個人向けの賃貸・売買契約で紙の契約書の形態が生き残る限り、電子契約が出来たって、寧ろ、両方の対応をしなければならくなり、手間が倍になるだけです。

悪質不動産業者の存在

 不届き物の悪質不動産業者の存在が物件情報の流通IT化を妨げている側面があります。

 物件情報の無断掲載と無断転載の2次広告を行う不動産業者がいるのです。たとえば、アパマンショップなどはインターネット上で出回っている物件情報を全て丸コピし、自社データベースに取り込み、勝手にインターネット検索サイトに広告を掲載したりして大問題となりました。

 情報発信元である元付け業者からの依頼も承諾もなく、勝手に募集を出しているので、いわゆる「おとり広告」以前に、もっと悪質です。

 アパマンショップは物件検索サイトでその「おとり広告」をみたお客さんが釣れれば、大家貸主に直接話しを持っていくか、自社物件にすり替えて契約させるという信義に反する、「中抜き」という悪質な行為を行っていたりします。

 そのうえ、適当に元付けに客付けする場合、入居者から除菌消臭施工代31,500、安心入居パック18,900、初期消火器6,090円といった、契約金に上乗せ請求しアパマンの自社利益とする悪質な行為までしています。

 こういった悪質な業者が出てくるので、本当は宣伝したい、広く情報は出して流通させたい、共有させたい、という反面、信頼している同業者以外には詳細情報はなるべく出したくない、というアンビバレントな事が起きるのです

 こういった事情は、実際に不動産業界にいて、実務をやった事のある人間でないと、分からないことでしょうね。

 後述する海外の事例では、デジタル標準化を済ませたアメリカでは、IDX(後述します)といったツールとルール作りによって、自社が認可を与えた会社にしか情報の利用・共有を許可しない、といった方法も実装することが出来ます。

 

次は、業界団体問題です。

 

課題(2):慣行と慣習と規制

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 不動産物件情報の流通IT化における課題というのは実際、非常に多いです。ありとあらゆるところに非効率さがあるのですが、実は不動産業界は非効率な慣行と法規制を糧に飯を食っている所もあるので、自らを非効率な不便さに身を縛り付けているような点があります。  

 効率的になって中抜きされたら商売上がったり、になる人達が沢山いるからです。

 しかも、この業界に入ってみないと分からない細かな障壁というものも沢山存在するのです。しかもそれは、安易に見過ごしたり壊したりするわけには行かない、それ相応の理由というのも、実際に業務に携われば分かってきます。

特性と法規制

 インターネットに公開した物件情報は、申込時点で募集を取り下げないと「おとり広告」となってしまいます。そのため、情報の流れをコントロール出来なければならない。つまり一次情報の発信元が情報を更新したならば、2次3次情報公開者も遅滞なく更新された情報を反映させなければならない義務が発生するのです。(不動産の公正競争規約

 勝手に出回ってしまっては発信元も責任を問われる可能性が出てくるし、利用者にも不利益となります。なので、そういった意味でも物件情報の2次利用は勝手におこなってはならないという前提があります。元々無断転載、無断2次広告はダメです。空室確認せずに放置もだめです。

 しかし、そんな事をいちいちちゃんとやっていたら、ひたすらFAXと電話で物件確認をし続けなくてはなりません。ありえません。これに関しては、テクノロジー的な課題でも障壁でもなく、逆に(正確性、リアルタイム性などなどは)ITを使って解決できる問題なのであります。

 不動産業法的に決められている内容を表示しなければならない、といった点は調べれば簡単な話しなので、対した事はありません。

 問題となるのは、日本と海外では不動産に関わる法規制が異なる上、慣習も全く異なる(日本では2DKとかが基準だが、欧米ではベッドルーム数が基本等々)為、参入障壁となって、海外製の規格やサービスが一切入ってこれない為、超がつくほどのぬるま湯で化石のような状態のまま数十年たっても古い慣行が硬直したまま続けられている、という事です。

 後述しますが、海外の事例にあるような規格やサービスは日本では使えません。それにあぐらをかいて非効率なままで高コスト体質に満足してしまっているのが日本の不動産業界の現状です。

プライバシー

 詳細住所、建物名、室内間取り、室内写真、空室時期などの詳細がインターネットに公開され、それが無制限にコントロールなしに出回ってしまう、という違和感があるようです。

 個人の名前や取引情報や登記簿情報が出回るわけではないので、それほど心配する必要はまったく無いのですが、まだ違和感はぬぐえないと。

 貸主や入居者が嫌がるケースは確かにあるようで、無制限に公開されることによって、勝手に物件の周りをうろつく「不審者」風の人が出てきたり新たな問題も起きてくるかもしれないという懸念です。

 つまり、闇雲に全ての情報を全公開すればよいという話ではない、という事で、公開基準と範囲を決めるだけでよく、やり方次第であります。

囲い込み

 一般に、企業の目的は営利の追求であり、究極的には顧客や市場を独占しようとする力学が働きます。特に不動産業界は元々、顧客の囲い込み=情報の囲い込み、となりやすい構造なのです。顧客側と不動産業者側との間に情報の非対称性がある中で、それを商売にしている構造があります。ただ、不動産業界は特殊な点があって、過度な情報囲い込みでは事業は成り立たず、他業者とも情報を共有しないとやっていけませ。また、囲い込みによる、両手狙いといった、消費者への不利益となる弊害が増します。

 不動産業者だけでなく、当然ながら物件検索サイトからして顧客=不動産業者の囲い込みに必死ですから。ITで効率的に、広く物件情報が流通してしまっては困る、というのが物件検索サイト運営者側の立場となります。

 つまり、この不動産業者や関連プレーヤーがすべからく「情報の囲い込み」をしたがるのでお互い協力したがらない、という事が、情報流通のIT化をしていく上での、実は一番の障壁だったりします。

 この構造ゆえに、不動産業というのは法律で厳しく規制されており、業法によって、レインズという流通機構に登録して情報の流通を妨げないように定められています。問題は、レインズが実質的に形骸化しており、まったく使い物になっていない、という点です。

 

次は、ITリテラシーと悪質業者です。