不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

課題(3):不動産業界団体の問題

本ブログは下記へ移転しました。誠に申し訳ありません、お手数をおかけします。

 

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>>目次

 初めのエントリで紹介した、業界団体系の物件検索サイト、レインズはもとより、ハトマークサイト、ハトマークネット、 ハトさんの問題。

 個人レベルからの宅建業者の集まりである業界団体が、一つのウェブサイトを運営するというだけでどういうシステムやサイトが出来上がるか、というのは簡単に想像がつきます。

 そもそも業界団体の委員会などが一般向けのサービスを運営するなど、はなから止めるべきです。

 何をどんな風にどんな相手に、という流れを一つのサービスに落とし込んでいく上で、無数の決定事項、使いやすい使いにくいという汎用性と個人性が混濁しやすい部分での決定権、リーダーシップ、そういったものは団体的作業では不可能に近いのです。責任とリーダーシップ不在の団体からは、無難なものしか生まれない運命です。

 一つの製品デザインや、動物のしつけ、そういったものは、みんなでやるべきことではないのです。アップルのスティーブ・ジョブスのように分かっている人間が独裁的なデザイナーとして、プロダクトの絶対的かつ唯一の決定権をもって芸術家の作品のような一貫した完成度をもたせた製品やサービスが良いのです。動物の調教たとえば馬だったり犬だったりも、別々の調教師が口をだして別々のことを言ったら混乱します。一人が一貫した正しい態度を貫くべきなのです。

 行政、官僚、政治というものは、人・物・お金などの流通の、「規制と基盤整備」を行うのが仕事であって、民間のベンチャーがやるような事に手を出してはいけません。失敗する運命にあります。

 業界団体(特に、東京都不動産協同組合)も、一般向けの物件検索サイト「ハトさん(ハトマーク東京不動産)」の開発運営やら、物件管理ソフトやら間取り図ソフト開発など、自由な民間の市場ですでに活発に行われているソフトウェアやサービスを、わざわざあえて団体組織が2番煎じのサービス開発に無駄金を投じるべきではないのです、そもそも。

 しかも、特定のソフトウェアシステムを会員に使わせようとするのは完全に間違っています。独占による多様性を奪うと市場の原理が働かず、そのソフトウェアの進歩(改善)が無くなります。利用者の不利益に繋がるのです。ソフトウェアの世界に限らず、当たり前の基本的な話しです。

 つまり、団体が自ら開発運営して、それを会員に使わせよう、というのは2重に間違っている、という事なのです。そんな事がこの10数年間、目の前で繰り広げられてきたのを目の当たりにして、私は一人で頭を掻きむしるような状態でした。結果は案の定、です。

 行うべきなのは、不動産物件情報流通のグランドデザインと標準規格の策定、つまり「基盤整備」です。こればかりは、民間では出来ません、やりたがらないのです。民間は自社で市場独占を目指します。営利企業ですから。民間にまかせた独占の結果は利用者の不利益です。

 基盤整備が出来ていない混沌とした環境ではルールもなく、エコシステムの発達もあり得ません。そこの環境を整備・ルール作りをするのが、本来の業界団体の仕事なのです。具体的なソフトウェアやサービスを作るべきでは決してありません。つまり、情報流通の標準規格を制定・策定すべきなのです。

 民間はその標準規格に合わせて、市場の原理でより良いシステムを開発していくでしょう。そして不動産業者は、各々の事情に合わせたシステムを自由に選んで利用する事ができるようになります。

具体的には後述します。

 

すべきでないこと

1.ITゼネコンに丸投げ

 その昔、良く分からない不動産業界団体の役員さん達が、日立なんとかとかNTTデータなんとかとかNTTコミュニケーションズといった、いわゆるITゼネコンに取り入れられて、ITゼネコンの口車にのせられてウン億円単位のお金を費やして、結果ろくなものが何も出来なかった、という大失敗をしたのはこの業界では一部で有名な話し

 ITゼネコンなんて、自分じゃ何も作る事の出来ない技術力ゼロの下請け丸投げ天引き屋さんなんだけど、知らない人にとってみれば、責任も含めて丸投げできるから楽なんでしょうね。

2.開発運営を自ら行うこと

 ITゼネコンにしてやられたからと言って、団体自ら開発運営をやろうとした時期があります(笑)。

 業界団体の会員向けに、一つ同じシステムを使わせようと自ら開発に関わる事もダメダメです。まず第一に、1つのもの使う事を推薦という形で強制させるのがダメダメ。

 過去、賃貸業務システムと間取り図ソフトを宅建協会の協同組合が参画して採用する動きがあったのですが、失敗するのは見え見えでした。

 たとえば、いくらLinuxが無料だからといって、みんなにLinux使えって言ったって、使いたくない人だっているでしょう?ブラウザだって、色々な種類があって、ChromeFirefox等々、好きなのを使えるのが当然です。大事なのは、ウェブページの規格を統一しているので、好きなブラウザでも見れる事。つまり、標準規格を定める事です。

3.検索サイトを自前で作ること。

 民間事業者と同じことをして張り合うのは業界団体の役割では無いはずですし、できません。業界団体とは言え、しょせん烏合の衆。

  東京都不動産協同組合が作ったアレやコレの話しですよ。説明会にも参加しましたけれど、クラウドクラウド連呼するのは良いけれど、なぜに顧客管理システムであるセールスフォースのCRMを無理やり物件管理システムにカスタマイズするとかいうアホな提案に乗ってしまったのか・・・

 ハトマークのサイトとかの話しです、はい。ハトさん(ハトマーク東京不動産)とか。予想通り、閑古鳥が鳴いて大失敗です。

4.特定の物件検索サイト事業者に頼ること。

 情報流通の非効率性=物件検索サイト及びコンバート事業者の利益、という構図を 忘れてはいけません。なので、情報流通のIT化と効率化、という案件でアットホームやリクルートのスーモ、ホームズに意見を聞くべきではありません。絶対に反対するからです。自らの情報の囲い込みと、非効率性から利益を得てそれを追求するのが立場であって、不動産業者とは、ある意味利害が対立しているからです。

 現状では、アットホームなど、既存の検索サイト運営事業者や、広告代理店みたいなのや、大手ITゼネコンに丸投げ委託、たとえばハトマークネットなどは、業界団体のサイトではりながら、なぜかログインするとアットホームのドメインで運用されていたりします。これ、そもそも公正取引に違反しないのか?と。特定の営利企業に、業界全部の情報が行く形になってしまっていたり・・・。

 いずれにせよ、とても異常な状態です。

 

次回は、不動産物件情報をIT化する上での3大原則の話しです。