不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

課題(2):慣行と慣習と規制

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>>目次

 不動産物件情報の流通IT化における課題というのは実際、非常に多いです。ありとあらゆるところに非効率さがあるのですが、実は不動産業界は非効率な慣行と法規制を糧に飯を食っている所もあるので、自らを非効率な不便さに身を縛り付けているような点があります。  

 効率的になって中抜きされたら商売上がったり、になる人達が沢山いるからです。

 しかも、この業界に入ってみないと分からない細かな障壁というものも沢山存在するのです。しかもそれは、安易に見過ごしたり壊したりするわけには行かない、それ相応の理由というのも、実際に業務に携われば分かってきます。

特性と法規制

 インターネットに公開した物件情報は、申込時点で募集を取り下げないと「おとり広告」となってしまいます。そのため、情報の流れをコントロール出来なければならない。つまり一次情報の発信元が情報を更新したならば、2次3次情報公開者も遅滞なく更新された情報を反映させなければならない義務が発生するのです。(不動産の公正競争規約

 勝手に出回ってしまっては発信元も責任を問われる可能性が出てくるし、利用者にも不利益となります。なので、そういった意味でも物件情報の2次利用は勝手におこなってはならないという前提があります。元々無断転載、無断2次広告はダメです。空室確認せずに放置もだめです。

 しかし、そんな事をいちいちちゃんとやっていたら、ひたすらFAXと電話で物件確認をし続けなくてはなりません。ありえません。これに関しては、テクノロジー的な課題でも障壁でもなく、逆に(正確性、リアルタイム性などなどは)ITを使って解決できる問題なのであります。

 不動産業法的に決められている内容を表示しなければならない、といった点は調べれば簡単な話しなので、対した事はありません。

 問題となるのは、日本と海外では不動産に関わる法規制が異なる上、慣習も全く異なる(日本では2DKとかが基準だが、欧米ではベッドルーム数が基本等々)為、参入障壁となって、海外製の規格やサービスが一切入ってこれない為、超がつくほどのぬるま湯で化石のような状態のまま数十年たっても古い慣行が硬直したまま続けられている、という事です。

 後述しますが、海外の事例にあるような規格やサービスは日本では使えません。それにあぐらをかいて非効率なままで高コスト体質に満足してしまっているのが日本の不動産業界の現状です。

プライバシー

 詳細住所、建物名、室内間取り、室内写真、空室時期などの詳細がインターネットに公開され、それが無制限にコントロールなしに出回ってしまう、という違和感があるようです。

 個人の名前や取引情報や登記簿情報が出回るわけではないので、それほど心配する必要はまったく無いのですが、まだ違和感はぬぐえないと。

 貸主や入居者が嫌がるケースは確かにあるようで、無制限に公開されることによって、勝手に物件の周りをうろつく「不審者」風の人が出てきたり新たな問題も起きてくるかもしれないという懸念です。

 つまり、闇雲に全ての情報を全公開すればよいという話ではない、という事で、公開基準と範囲を決めるだけでよく、やり方次第であります。

囲い込み

 一般に、企業の目的は営利の追求であり、究極的には顧客や市場を独占しようとする力学が働きます。特に不動産業界は元々、顧客の囲い込み=情報の囲い込み、となりやすい構造なのです。顧客側と不動産業者側との間に情報の非対称性がある中で、それを商売にしている構造があります。ただ、不動産業界は特殊な点があって、過度な情報囲い込みでは事業は成り立たず、他業者とも情報を共有しないとやっていけませ。また、囲い込みによる、両手狙いといった、消費者への不利益となる弊害が増します。

 不動産業者だけでなく、当然ながら物件検索サイトからして顧客=不動産業者の囲い込みに必死ですから。ITで効率的に、広く物件情報が流通してしまっては困る、というのが物件検索サイト運営者側の立場となります。

 つまり、この不動産業者や関連プレーヤーがすべからく「情報の囲い込み」をしたがるのでお互い協力したがらない、という事が、情報流通のIT化をしていく上での、実は一番の障壁だったりします。

 この構造ゆえに、不動産業というのは法律で厳しく規制されており、業法によって、レインズという流通機構に登録して情報の流通を妨げないように定められています。問題は、レインズが実質的に形骸化しており、まったく使い物になっていない、という点です。

 

次は、ITリテラシーと悪質業者です。