不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

不動産情報流通IT化の障害:レインズ

 以上見てきたとおり、海外ではMLSとその関連技術が続々と登場しインターネットで活発な不動産流通に利用され、業者のみならず一般の益となっているいるのに、なぜ日本では不動産情報流通IT化に全く動きが無いのか。

 一つには、レインズに元凶がある、と言わざるをえないのです

 レインズの存在意義、それは法令で定められたから、ということで皆が思考停止をしてしまい、本来の流通促進の目的にまったく寄与していないどころか、むしろ障害となっています。

 日本の不動産業界は「日本にはレインズがあるから」と、主体的に考えることを放棄してしまっているように見えます。

 そもそもこのサイト、利用者のユーザビリティ やウェブ標準など眼中になし、もはや欠陥サイトといっても過言ではありませんユーザビリティなど眼中にないので、改良などされませんし、しかもWindowsInternet ExplorerIE限定でないと動かないという非ウェブ標準を堂々と謳ってしまう異常さが特徴。

(2021年になって、予告されていたマイクロソフト社によるIE終了・無効かを目の前に控え、やっとレインズもリニューアルされ、他のブラウザに対応しました。20年遅い気がします)

 しかも、募集図面を登録するのに、PDFではなく、JPEGなどの画像形式しか受け付けない。結果、登録する際の変換作業が必要なのはもとより、客付け業者が印刷しようとすると、滲んでしまってどうしようもない、という悲劇が日々起きている。

 このJPEG必須、というのは、レインズ上で図面の帯を差し替えられるようにしている為で、PDFだと技術的に難しいから、との内部の人。(いや、帯情報の差し替えなんて不要なのでPDFにすべきです)

 このサイトが、インターネットを初めて使わされた不動産屋のインターネットアレルギーを引き起こす悲劇が日本全国で多発。レインズが日本の不動産情報のIT化において、致命的な遅れを引き起こしてきた、ということは、もはや認めなければなりません。

 この2015年に、レインズのページタイトルは、

<title>ようこそ!レインズIP型ホームページへ!</title>

ですか。

 「IP型ホームページ」って、いつの時代の話だろうか。実は、このIP型というのは、F型に対する新システムという位置づけ。F型つまり、マークシートのFAXでの入稿だったのである。しかも厳密にはIPと言ってもTCP/IPのレイヤー上の普通のHTTPだべさ。つまり普通のウェブサイトじゃん、何を言っているのさレインズさん、みたいな。

2021年にやっとレインズもリニューアルされました。

 

 あまりに使いにくいため、誰も使わず、物件も登録されないので使う利点が無いので、仕方がなく義務の部分は使い、登録しなくてよい専属・専任の以外は登録しない、賃貸物件も登録しない、しなくて良いから無駄な労力は使わない・・・レインズはそんな状況になっています。

 MLSの起源は、協業の意義「協力と報酬」=売主買主顧客利益である、と紹介しました。ところが日本では使い物にならないレインズが無碍にされ、大手不動産業者の囲い込みによって、顧客の不利益、企業の利益追及主義がまかり通ってしまう現状です。

 

 結果として、

 「日本の不動産業界は、公平性で米国から100年は遅れている」。ある中堅不動産業者の首脳は、断言する。特にこの首脳が問題視するのが「両手仲介」だ。

 両手仲介とは、自社の顧客である売り手の物件を、自社の顧客の買い手に仲介することだ

diamond.jp

 とか、

大手不動産仲介各社による宅地建物取引業法違反とみられる行為の数々が記録されたデータが、業界の一部で出回り始めている。本誌では同データを独自に入手した。今後、不正行為の実態が明るみに出れば、各社に厳しい処分が下される可能性もある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

diamond.jp

 

 こんなのばかりです。放置していては、ひいては日本の不動産業界の信頼さえ失われるのではないか、と懸念されます。

 

2015年7月2日追記

レインズ課金という発表が...酷いなぁ。