不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

現状(3):業者間における物件情報流通

本ブログは下記へ移転しました。誠に申し訳ありません、お手数をおかけします。

 

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>>目次

  今回は、業者間流通の流れを見ていきます。

 物件情報は、ご存知の通り、不動産会社からお客さんへという流れだけではなく、業者同士で横に情報を流し合い「これこれこういう物件で入居者募集中です。お客さんご紹介ください」と業者間での物件情報のやり取りがあります。

 不動産物件の情報というのは、1社が情報を囲い込んでいては情報が広まらず、エンドユーザーであるお客さんに届きません。なので、昔から、同業者間の情報共有という協力関係は重要なものとして存在しています。これは、物品販売やサービス提供するだけの業界には中々無い互恵関係の概念と言えるでしょう。

 実際、物件情報は、不動産会社からお客さんへという流れだけではなく、業者同士で横に情報を流し合い「これこれこういう物件で入居者募集中です。お客さんご紹介ください」とか逆に「こういう条件の物件ありますか」「この物件まだ空きありますか」といった業者同士での物件情報のやり取りが日々行われています。いわゆる「物件確認」とか「物確」とかいわれるものですね。

 しかし、一部の業者による物件情報の囲い込み(顧客の囲い込みが最終目的)というのも存在し、そういう行為は、結果としてお客さんの不利益となります。

 なので、囲い込みをする業者を縛り、適正な物件情報の流通を図る必要性があります。不動産業では、通称「業法」といって、宅地建物取引業に関わる法律が整備されており、囲い込みされないように幾つかの規定が定められています。

 2015年の今、主に以下のパターンがあります。

1.「業法サイト」指定流通機構レインズ

 レインズは、前述の業法で定められた、不動産業者専用の物件情報の登録・検索サイトとなります。

 しかし、法律で定められている、という理由で存在しているため、市場の原理が働かず、サイトのユーザビリティは最悪で、法律で決まっているから使わなくてはいけない限られたケースで使うだけで、本来なら絶対に使いたくないような使い勝手のサイトとなっていました。何しろ、インターネットエクスプローラーしか対応しておらず、FirefoxChromeでアクセスすると、ログインすら出来ない、という代物だったのです。

 2021年になって、マイクロソフト社が、インターネットエクスプローラーを廃止し、削除するとなってはじめてレインズも改修リニューアルされ、Firefoxなども利用できるようになりました。

 20年くらい遅れている気がします。

 法律上登録することが義務付けられているのは、売買でかつ取引態様が専任・専属専任の場合に限ります。また、物件の図面と言った書類をTiff形式かJpegの形式でしか登録できないという糞仕様で、PDFで登録出来ませんでした。なので、レインズから図面を取得して印刷すると、画像なので、滲んでしまって読めたものではない、という状況だったのです。あり得ません。中の人に言わせると、レインズ上で図面の帯情報(元付け会社情報)を差し替えているからPDFより画像形式じゃないとむり、という理由ですが別にレインズ上で帯情報を差し替える機能を持たせる必要性はゼロであって、PDF化する利点を上回るとはまったく考えられません。2021年!の改修でやっと出来るようになりましたが。あり得ません。

 賃貸では義務が無い為、ほぼ誰もまともに使っていない印象で、業者からもレインズ経由での問い合わせはまずこないです。

 つまり、物件情報の利用を促進する、という本来の意義をとことん損なっているのがレインズ、と言っても過言ではないでしょう。

2.マイソク(ファクトシート)図面頒布

 株式会社マイソクや アットホーム株式会社のサービスで、営業マンが個別に加盟不動産会社を回って、業者間で物件の図面を頒布するという流通形態。一番単価は高いが、業者としては楽と言えば楽です。

3.電話とFAXとメール

 電話で、「これこれこういう物件ありましたらFAXください」、「アットホームで見たこれこれの物件まだ空きありますか、図面FAXください」という昔ながらの方法。

 現状、一番確実で早い方法ではあるのですが、とても非効率な方法です。特に繁忙期はこればかりでとてもじゃないけれど不動産営業マンは堪らないです。大きい所は繁忙期には専用の電話番を雇ったり・・・。

 アナログな方法かと思うでしょう。しかし、現状、実務をやっている人間からすると、これが一番確実で早い方法なのです。なぜなら、インターネット上で掲載されている情報は古いものだったり、2次広告だったり、情報の鮮度が悪い為にインターネット上に掲載されている情報は信頼できないからです。

 鮮度が悪くて信頼できないのは、インターネットへ物件情報を公開する方法が非効率的だからです。

 なので、一方的なFAX送付やメールのダイレクトメール送信と言った迷惑メールみたいな手法も未だに多用されています。

 これをテクノロジーを使って解決していく事が、現場の不動産会社の為にも、圧倒的に優先度が高い、と言えます。

 これについて、後半にて解説し、最後に提言をまとめます。

4.物件検索サイトの付加的サービス

 物件検索サイトに登録した物件を、別の不動産会社が自社広告として取り込める、「インフォシート」図面を印刷してお客さんに紹介できるといった、たとえばアットホームがやるATBBなどの形態。物件検索サイトへの掲載のため登録した物件情報を、他の業者も見れるようにした業者間流通の形態です。スーモやホームズにも似たようなサービスがありますが、紙媒体の頒布を行うアットホームが一歩抜きん出ている印象。

5.その他

 新しい業者間流通のサービスも出てきていますが、より多くの会社が参加しないと意味が無いので、閉じた業者間流通ネットワークがいくつ増えてもあまり意味が無いどころか、フラグメンテーションを起こして逆に流通促進を妨げかねない懸念もあります(私企業の独占も問題ですが)。レインズが使い物になっていないからです。

まとめ

 どれも、これ、という方法がなく、不動産会社は全部の方法に対応しなければならない。非効率な「ドブ板選挙」ならぬ「ドブ板営業」とあまり変わらない。

  解決方法は、APIを使って効率化する事です。後述します。

 

次回は、課題を一つ一つ見ていきます。