不動産情報デジタル標準化の覚書

(元)宅建士・プログラマーが提言したいこと

紙、電話、FAX撲滅なるか?アットホームに訊いてもしょうがないですよ?

www.itmedia.co.jp

 

という記事が目に付きました。

 「いまある業務をとてつもなく楽にしておかなければ、今後、業界は立ちゆかなくなる」――。

利用者の利便性が高まる一方で、仲介業者らの業務負荷は年々増加傾向にあるという不動産業界。現在も多くの事業者が紙と郵便、電話、FAXを標準のツールとして利用する状況だ。

同感です。しかし、そもそもアットホームさんに入稿する際に、API連携が出来ない為に、わざわざ手入力をしなければならないんですが、そこはどうなんでしょうか。

XMLで標準化してAPIに対応してくださいませんかね。

 

 だが、いまはコロナ禍をきっかけに、あらゆる業界で脱ハンコ、ペーパーレスの検討が進む状況だ。業法による規定やステークホルダーの多さ、小規模な事業者が多いという特徴を持ことから、デジタル化が進みにくかった不動業界も同様だ

 

ステークホルダーが多い、つまり、みんながみんな「囲い込み」したがってお互い協力しない、ということでしょう。

この件、「業法による規定」も「ステークホルダー」「小規模な事業者が多い」件も、本ブログですべて以前、以下のページで書きました通りです。

  業法的に決められている内容を表示しなければならない、といった点は調べれば簡単な話しなので、対した事はありません。

[中略]

 不動産業者だけでなく、当然ながら物件検索サイトからして顧客=不動産業者の囲い込みに必死ですから。ITで効率的に、広く物件情報が流通してしまっては困る、というのが物件検索サイト運営者側の立場となります。

 つまり、この不動産業者や関連プレーヤーがすべからく「物件情報の囲い込み」をしたがる、という事が、情報流通のIT化をしていく上での、実は一番の障壁だったりします。

課題(1):慣行と慣習と規制

 

 問題は、それを言い訳に業界全体でIT化が放置されていて発展が無いことなのです。「初心者にも分かり易いように」この一言は「普通の人には使いにくいように」と言うのと同義語です。

課題(2):ITリテラシーと悪質業者

 

そもそも、アットホームに聞いてもしょうがない事で、自社サービスの宣伝に終始するに決まっているでしょうに。

 

日本、気づけばガラパゴス 「不動産API」連携に後れ

日本、気づけばガラパゴス 銀行API連携に後れ: 日本経済新聞

タイトルは日経記事タイトルのもじりです。

金融業界は「銀行API」について、行政の意気込みがあるだけマシです。なにしろ、日本の不動産業界には、不動産APIすらないんですからw

 

「日本のAPI市場はインターネットにつながらないパソコン状態だ」。フィンテック協会の鬼頭武嗣代表理事副会長(クラウドリアルティ社長)は嘆息する。やり玉にあげるのが、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の仕様だ。企業や金融機関によってばらばらで、組み込み型金融の肝である事業者と金融機関の連携が進まないガラパゴス状態になっている。

APIは電話線のようにアプリケーションをつなぐ役割を果たす。フィンテック企業と金融機関や事業会社を結ぶ重要なインフラだ。

日本では2018年に施行した改正銀行法で金融機関にAPI連携に関する努力義務が課された。100を超える金融機関がAPI契約を結んだが、銀行によってAPIの仕様が異なり、金融機関向けのサービスを横展開しづらい。

 

日本、気づけばガラパゴス 銀行API連携に後れ: 日本経済新聞

 

因みに、こういうのは、「ガラパゴス」とは言いません。単に、「遅れている」または「進歩がない」と言います

金融の世界では、投資や会計上での海外とのやり取りの必要性から、業界標準データフォーマットや規格整備などは日本でも採用が進んでいる方です。

不動産業界は、法令や慣習の違いで、海外の標準規格がまったく使えないため、日本の不動産業会はぬるま湯に浸って、完全に停滞しきっている状況。なにしろ、日本の不動産業界では、未だに「紙と郵便、電話、FAXが標準のツール」という世界。国交省も、業法を改正して、XMLで不動産物件情報の流通フォーマットを標準化してAPIに対応するよう努力義務追加する改正してくれませんかね。

もう10年以上前から言っているんですけれど

不動産登記簿の情報をブロックチェーンで?一体何をアホな・・・

 「既存の登記制度・権利の公示制度をブロックチェーン等を利用して完全に電子化することなども中長期的に検討されるべき事項なのではないかと考える」

Orz。

ダメだ、何も分かってない・・・と溜息がでる。

出所は下記なんですが、

 

第 12 回 不動産投資市場政策懇談会(令和2年4月22日)
議事概要

 

議事③ 金融技術進展等を踏まえた対応策
資料 5 に関し、以下のとおり意見があった。

ICO(Initial coin offering)と、IT を利用したセカンダリーマーケットが一般化すると、
インパクトが大きいものと思われる。また、既存の登記制度・権利の公示制度をブロックチェーン等を利用して完全に電子化することなども中長期的に検討されるべき事項なのではないかと考える。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001348258.pdf

建設産業・不動産業:不動産投資市場政策懇談会について - 国土交通省

 

あのですね。いくらブロックチェーンが流行りの技術だからと言って、なんでもかんでもブロックチェーンにすれば良いという話しでは無いんです。技術的に出来るか、と言えばもちろん可能です(論文にするまでも無くw)。でも、ブロックチェーンp2pにして分散化させる意味あります?ないでしょw 誰がすき好んで不動産登記簿データのコピーを保持してコンセンサスアルゴリズムでみんなしてアレやコレして「マイニング」したりするというのでしょうかね。受け取るメリットは?ないですがな。普通に国が責任もってデータベースで管理すれば構わないですし、その方が10倍マシです。

因みに、私はブロックチェーンに懐疑的なアンチでもありません。寧ろ、関連ソフトウェアを何個も作るほどの人間です。

多分、この発言をした人は、未だにICOとか言っちゃってる事からも、自ら理解していないで、人から聞きかじった事(だいぶ遅れている話し)を吹聴しているだけ、という事が分かります。

こんなレベルの発言が、国交省の政策懇談会で飛び出すなんて、嘆かわしいこと極まりない。

 

さらに悪い事に、日本のIT企業はと言えば、「ブロックチェーン」というバズワードに乗ってここぞとばかりに意味のない事をぶち上げて自社の宣伝をする、という無意味な事ばかりしています。アホです。ブロックチェーンビットコインを構成する内の単なる一つの技術に過ぎず、なんでもかんでもブロックチェーンにすれば良いという訳じゃないのです。

ブロックチェーンで自社サービスにユーザーを囲い込みしよう、なんて考えている企業があったらそれこそ笑いものです。なぜなら、ビットコインの成功は、企業や政府による中央集権的な管理の余地を徹底的に排除した、純粋なP2Pで自立的というかDecentralized(非中央集権的)に動くシステムを実現したところにあるからです。

ビットコインの特性は、「暗号」と「ブロックチェーン」と「コンセンサスアルゴリズム」の3つを組み合わせて使った、非中央集権の分散型マネタリーシステム、という点です。

「ビットコイン・スタンダード」を読んだ - torum

 

ビットコインがなぜ「トラストレス」つまり「中央集権的な管理の余地を徹底的に排除」したものにしなければならなかったのか、というと、中央銀行が管理する法定通貨では、中央銀行がじゃぶじゃぶお金を刷ったりして金融システムを歪めるという問題があるからです。これは、ビットコインジェネシスブロック(ブロックチェーンにおける最初のブロック)に、「The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for bank」とあるのが有名な話しで、リーマンショック後の金融危機で、銀行救済などの話しが出ていた時です。

つまり、市場へ介入する銀行や政府といった第三者(トラスト)を排除するのが狙いなのです。そのためにわざわざある種面倒な「暗号」と「ブロックチェーン」と「コンセンサスアルゴリズム」の組み合わせでやってるのです。そうでなければ、中央集権的なシステムの方が効率的なのです。

登記のシステムを維持するのに、無理して「トラストレス」をする理由付けありますか?現在のシステムで政府が不正に記録を書き換えたりして問題になっていますか?という話しです。そうでなければ、わざわざ無理して不便で非効率な「トラストレス」なシステムにする必要はありません。

 

追記:ちょっと調べてみたら、悪夢のような文献を見つけてしまった・・・

不動産の分野でも、スマートコントラクトを活用すれば、契約書を電子化したうえで、契約の成立を「執行条件」とすることによって、不動産登記や資金決済の実行を自動的に行い、業務の効率化を図るといった構想が考えられている。

 土地総合研究 2019年秋号

特集 不動産市場の新潮流 -ブロックチェーンの不動産分野での活用可能性

麗澤大学 経済学部 教授

https://www.lij.jp/html/jli/jli_2019/2019autumn_p064.pdf

 

あのですねw まず「コントラクト=契約」と超単純に勘違いしているんだと思う。イーサリアム等の「スマートコントラクト」はそういうものではなく、開発者のヴィタリック・ブテリンも、「名前付け失敗した~」とツイッターでぼやいてましたが、そういうものではありませんからw

因みに、これがそのツィート。

 

訳すと、

はっきりさせておきたいんだけど、現時点で、「スマートコントラクト」と名付けてしまった事を自分は相当に後悔してる。もっとつまらない単純で技術的なネーミングにすればよかったよ。例えば「パーシステントスクリプト」とかさ。

ですw

 

で、筆者が想定しているような「スマートコントラクト」は単なるプログラムです。どこにでもある単なるコンピュータープログラム。ブロックチェーン関係ありませんw 賭けてもよいけれど、筆者の方はプログラミングとかは素人だと思う。ビットコインブロックチェーンで「所有権の移転を記録」とか「台帳」とか出てくるから、不動産関係の人はすぐ、「これ登記じゃん?」って発想になるんでしょうが、木を見て森を見ずというかなんというか・・・。

大体において、こういう事を言う人達は、不動産関連実務がそもそも分かってない系か、技術的な事が分かってない系のどちらかが、「(今流行りの)ブロックチェーンで出来るんじゃね?」と思いつきで言っているだけです。実際にメリットがあるか、技術的に適しているか、なんて、まったく考慮にいれてないで話してますからw

 

 

不動産情報流通IT化の障害:レインズ

 以上見てきたとおり、海外ではMLSとその関連技術が続々と登場しインターネットで活発な不動産流通に利用され、業者のみならず一般の益となっているいるのに、なぜ日本では不動産情報流通IT化に全く動きが無いのか。

 一つには、レインズに元凶がある、と言わざるをえないのです

 レインズの存在意義、それは法令で定められたから、ということで皆が思考停止をしてしまい、本来の流通促進の目的にまったく寄与していないどころか、むしろ障害となっています。

 日本の不動産業界は「日本にはレインズがあるから」と、主体的に考えることを放棄してしまっているように見えます。

 そもそもこのサイト、利用者のユーザビリティ やウェブ標準など眼中になし、もはや欠陥サイトといっても過言ではありませんユーザビリティなど眼中にないので、改良などされませんし、しかもWindowsInternet ExplorerIE限定でないと動かないという非ウェブ標準を堂々と謳ってしまう異常さが特徴。

(2021年になって、予告されていたマイクロソフト社によるIE終了・無効かを目の前に控え、やっとレインズもリニューアルされ、他のブラウザに対応しました。20年遅い気がします)

 しかも、募集図面を登録するのに、PDFではなく、JPEGなどの画像形式しか受け付けない。結果、登録する際の変換作業が必要なのはもとより、客付け業者が印刷しようとすると、滲んでしまってどうしようもない、という悲劇が日々起きている。

 このJPEG必須、というのは、レインズ上で図面の帯を差し替えられるようにしている為で、PDFだと技術的に難しいから、との内部の人。(いや、帯情報の差し替えなんて不要なのでPDFにすべきです)

 このサイトが、インターネットを初めて使わされた不動産屋のインターネットアレルギーを引き起こす悲劇が日本全国で多発。レインズが日本の不動産情報のIT化において、致命的な遅れを引き起こしてきた、ということは、もはや認めなければなりません。

 この2015年に、レインズのページタイトルは、

<title>ようこそ!レインズIP型ホームページへ!</title>

ですか。

 「IP型ホームページ」って、いつの時代の話だろうか。実は、このIP型というのは、F型に対する新システムという位置づけ。F型つまり、マークシートのFAXでの入稿だったのである。しかも厳密にはIPと言ってもTCP/IPのレイヤー上の普通のHTTPだべさ。つまり普通のウェブサイトじゃん、何を言っているのさレインズさん、みたいな。

2021年にやっとレインズもリニューアルされました。

 

 あまりに使いにくいため、誰も使わず、物件も登録されないので使う利点が無いので、仕方がなく義務の部分は使い、登録しなくてよい専属・専任の以外は登録しない、賃貸物件も登録しない、しなくて良いから無駄な労力は使わない・・・レインズはそんな状況になっています。

 MLSの起源は、協業の意義「協力と報酬」=売主買主顧客利益である、と紹介しました。ところが日本では使い物にならないレインズが無碍にされ、大手不動産業者の囲い込みによって、顧客の不利益、企業の利益追及主義がまかり通ってしまう現状です。

 

 結果として、

 「日本の不動産業界は、公平性で米国から100年は遅れている」。ある中堅不動産業者の首脳は、断言する。特にこの首脳が問題視するのが「両手仲介」だ。

 両手仲介とは、自社の顧客である売り手の物件を、自社の顧客の買い手に仲介することだ

diamond.jp

 とか、

大手不動産仲介各社による宅地建物取引業法違反とみられる行為の数々が記録されたデータが、業界の一部で出回り始めている。本誌では同データを独自に入手した。今後、不正行為の実態が明るみに出れば、各社に厳しい処分が下される可能性もある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

diamond.jp

 

 こんなのばかりです。放置していては、ひいては日本の不動産業界の信頼さえ失われるのではないか、と懸念されます。

 

2015年7月2日追記

レインズ課金という発表が...酷いなぁ。

 

 

不動産情報流通IT化の為にすべき事

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  以上、現状と課題と技術要素、さらに具体的な海外事情を見てきたところで、日本の不動産業界の情報流通IT化の目指すべき姿のまとめです。

まずは、各物件検索サイトへの入稿で、いちいち手入力やわざわざコンバートをしなければならない状況を無くすべきです。

そのためには、
1.XMLで業界標準フォーマットを作る

 データフォーマットをXMLで標準化し、どのベンダーのソフトウェアからでも統一されたフォーマットで情報を入稿できるよう標準規格を整備すべきです。なんども言いますが、特定の企業の仕様ではなく、不動産業界団体が主導し、標準化団体なりでフォーマットの標準化をやるべきです。個々のベンダーの囲い込みを防ぐのがポイントだからです。

2.標準化されたXMLフォーマットでやり取りする標準APIを作る

 標準APIを使えば、異なるシステム・ソフトウェア同士で情報のやり取りが飛躍的に効率化され、様々な課題や弊害が解消されます

 以前書いた通り、海外の不動産業界ではRETS Web APIがあります。このブログでさえ、普通にXMLAPIをサラッと使って投稿しています。日本の不動産業界で出来ない理由はありません。

3.物件検索サイト・レインズ入稿で標準APIに対応する

 XMLによってフォーマットとAPIが標準化されれば、自社物件管理システムからレインズなどに物件情報を登録(または更新・取得)する際だけでなく、様々な連携がスムーズになり、新しい利用方法も出てきます。

 上記の図で言うと、「Webアプリケーション プラットフォーム+データベース」の部分は、自社ウェブサイトでも、ハトマークや不動産ジャパンのサイトでも、それこそレインズとも、はたまたそれ全部ひっくるめて読み替えて頂いてOKです。

 物件検索サイトやレインズ側でAPIに対応すれば、より新鮮で正確な物件情報が、より多く効率的に集められるでしょう。

 未だにレインズに手入力させたり、FTP+CSVでコンバート業者に月々3万円を払ったり、といった原始的な状況を卒業しましょう。

 それだけでなく、新たな活用方法として、例えば物件管理システムから物件情報データをXMLベースの形式で書きだし、別の図面作成ソフトに流し込んで図面を自動で作成とか、または元付け会社が物件情報をXML形式でメールに添付して送信したり自社サイト上で配信して - RSSAtomフィードのように! - 受け取り側の客付け会社などがそれを利用する等々。

 日本でも、不動産業界、腰を上げて標準フォーマットとAPI規格を作りましょうよって話です。抵抗勢力の反対は大きいでしょう。物件検索サイトなどは囲い込みがビジネスモデルですから情報流通が効率化して不動産業者が楽になるのは自社ビジネスにとって不利益だから裏で強硬に抵抗するでしょう。しかしそれは、近視眼的な無知からくる誤りです。本来は、そういったステークホルダーにも大きなビジネスチャンスとなるものだからです。

 経験上、そういった抵抗勢力は、大抵表立っては反対せず、なんだかんだ話しを逸らしたり、無関係な理由を持ち出して言い訳を言います。そう言った旧習にしがみつく抵抗勢力を組み伏せる必要があります。つまり、論理的に根拠を上げて説明して説得です。

 私は、ひとりで10数年以上前から同じことを言ってます。もうそろそろ時代でしょう。じゃないと、この業界に身をおくもの(元関係者)として、情けなくなってきます。

 

 実はその後、国交省でも、2008年の段階で「不動産ID・EDI研究会報告書」なるものを出しているんですよね。残念ながら、ポイントがずれている上に、アメリカのRETSなどの仕様については数行触れただけでスルーしてしまっている残念な報告書となってしまっています。なんで日本はこんなにも動きが遅いのでしょうかね。

 いや、「遅い」のではなく、まったく動いていない、でした。

 

 以下、思いつくまま作ってみた資料です。参考までに置いておきます。

 

 

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海外事情(3):RESO Web APIとは何か

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前回書いた、「MLSとは」と「RETSとは」の続きです。

RETS Web APIとは

 一言で言うと、不動産情報のRestful Web Service APIで、いまどきの技術を知っている20代のプログラマ相手だったら、「不動産物件情報をXMLで定義したRETS仕様を使ったRESTfulにCRUDするAPIだよ」と言えば、全て理解できるので一行で済むのですが.... 技術用語をなるべく少なくして、分かりやすい説明を試みます

 2015年現在、RETS Web APIは、下記の通りRESOに移管され、RESO Web APIという新たなAPIに移行中ですされました。

RESOとは

 NAR(全米不動産協会)が中心となって行ってきた不動産情報流通の技術標準化作業が、新たに設立された、非営利団体のRESOへ移管されました。もちろんNARが全面的にバックアップしています。

 RESOは、Real Estate Standards Organizationの頭文字を取ったもので、直訳すると、不動産標準化団体、という感じでしょうか。そのAboutのページには、

 

Open standards organizations, like RESO, exist in most industries to ensure technology advancement. A well-known example is W3C, which creates the standards for the World Wide Web. The most powerful technology companies in the world agree to collaborate to build a common web that raises the technology foundations of all competitors.

RESOのような標準化団体というものは、技術の発展を確実なものとする為に、殆ど全ての業界に存在しています。良く知られているのはW3Cでウェブの標準(訳注:HTMLやCSSと言ったこのページを表示する為の規格)を策定しています。もっともパワフルなテクノロジー企業達が競合同士、テクノロジー基盤を作るために共通のウェブを造る為に協力することに同意しているのです。

This is why you can get data, apps, services, and products from many different competing companies on the same smartphone. Web-based products are built on an open standard.

これがゆえに、我々は例え競合企業のスマホからであってもデータを取得しアプリやサービスを利用し製品を入手できるのです。ウェブベースの製品はもとからオープンな標準規格の上に作られています。

In real estate, RESO’s standards are created to promote that same experience: interoperability between MLS, broker, agent, and consumer technology tools.

不動産業界においては、RESOの標準規格が、それと同様のものとなります。MLS同士、ブローカー(不動産業者)、エージェント(宅建士)、消費者向けツール、といった全ての相互連携を図るためです。

About RESO | RESO - Real Estate Standards Organization

 

 とあります。さらに、設立当初の文面では、

 

RESO Standards

RESO標準規格群

The Real Estate Standards Organization (RESO) has set its goals to produce a common language spoken by systems that handle real estate information, such as multiple listing services (MLS). A common language enables computers like the one on your desk to receive information from many different real estate systems or MLSs without being specially "trained" to understand the information from each.

RESOの目的は、MLSといった不動産物件情報を扱う種々のシステム同士で「話す」ための「共通言語」を作成する事にあります。

Standards like the Data Dictionary, Web API and RETS 1.8 exist in many different industries. For example, air traffic controllers at international airports all speak English, no matter what their native language, so pilots are guaranteed that they need learn only one language to fly anywhere in the world.

標準規格である、データディクショナリや、ウェブ API、RETSと似たようなものは、様々な業界に存在します。例えていえば、航空管制では母国語がなんであれ、共通言語として英語が使われます。これは、パイロットが世界中を問題なく飛ぶことができるようにするためです。

The RESO standards is a language that was built for a specific purpose: to have all computers that deal with real estate information "speak" the same language, so that you can use the same desktop computer program with any MLS that has adopted RETS.

 RESO標準規格は、この不動産情報を扱うすべてのコンピューター同士で共通の言語を「話す」ことができるようにする、という目的です。これによって、1つのデスクトップのプログラムが、複数の異なるMLSと連携を取る事ができるようになります。

For software developers and providers of services like IDX sites, web portals and Broker in-house systems RESO Standards means having to write programs to use only one language in order to work with many different systems. This means lower costs, more products, more competition among vendors, and faster implementations of new systems, all of which directly benefit people who work with real estate information as a living.

ソフトウェア開発者やIDXサイトの運営者や、ポータルサイト運営者、などにとっては、一度RESO標準規格に対応したシステムを開発さえすれば、沢山の異なる種類のシステムと連携を取る事が可能となります。つまり、低コスト、より多くの製品、健全な競争によるより良いシステム、これらは全て、不動産に関わる職業をするすべての人々のメリット、利益となります。

RESO Standards

 

との文章がありました。

RESO Web APIとは

 

The RESO Web API is the modern way to transport data in the real estate industry. It is built on well-known, open technology standards so that any organization can use it to deliver or receive data quickly and efficiently.

RESO Web APIとは、不動産業界におけるデータ流通のモダンな方法です。このAPIは、オープンな規格かつ良く知られているテクノロジースタンダードを採用している為、効率的に素早いデータ送受信を、どんな組織であっても実装することが出来ます。

Using the RESO Web API for data transport allows for more interoperability: systems and apps can interact with each other in a more efficient manner. Real estate professionals and consumers have access to more seamless technology experiences when all industry participants adopt the Web API in their exchanges of data.

RESO Web APIで、データ転送における、より多くの相互運用性を図ることが可能です。システムやアプリが相互により効果的に連携出来ます。全ての業界関係者が採用する事によって、不動産プロフェッショナルはシームレスに情報にアクセス出来ます。

Michaal Wurzer, RESO Vice Chair and CEO of FBS, explains the need for the industry to move forward with the transition to the RESO Web API:
The RESO Web API moves the industry forward to widely-adopted RESTful design in use by most industries today. The Web API promotes greater access to real estate information directly from the web, mobile, social and other HTTP-based applications.

RESO Web APIは、ほぼ全ての業界で広く採用されているRESTfulなアーキテクチャーを採用しています。RESO Web APIにより、不動産データを、ウェブ上からモバイルからまたはHTTPベースのアプリケーションなどから直接アクセスできるようにもします。

RESO uses open standards and off-the-shelf tools that are supported across industries. By ensuring standards and protocols like OData and OAuth are at the core of the Web API’s functionality, industry incumbents and newcomers can be assured that they’re building technology that will be well-supported in the future.

 

 と、いう事です。

10年以上前から私が言い続けている事をアメリカでは実際にどんどん実行して、実現させている事が羨ましくて仕方がありません。

 

次回、まとめです。

 

海外事情(2):RETSとは何か

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 前回のエントリで、NARと、そのMLSとIDXについてお読み頂いた前提です。

Real Estate Transaction Standard (RETS)

 本命のRETSです。これと似たような規格を日本でも策定すべきだと思うのです。

 そのRETSとは・・・。いまどきの技術を知っている20代のプログラマ相手だったら、「不動産物件情報をXMLで定義した、不動産情報の標準フォーマットだよ」と言えば、全て理解できるので一行で終わってしまうのですが.... 技術用語をなるべく少なくして、分かりやすい説明を試みます。

 Short for Real Estate Transaction Standard, RETS provides a common language so that computers can more easily transfer real estate information, such as MLS data, to other computer programs or websites. The National Association of REALTORS® and other industry groups launched RETS in 1999.

Field Guide to Real Estate Transaction Standards (RETS) | realtor.org

 訳すと、

不動産トランザクション標準の略であるRETSとは、コンピューター同士やサイト間で共通の言語でより簡単にMLSのような不動産情報データの交換ができるようにするものです。1999年に、全米不動産協会(NAR)と業界団体がRETSを立ち上げました。

というモノです。これだと、簡単過ぎて、具体的な事が分からないでしょうから、もう少し詳しく説明すると・・・

Real Estate Transaction Standard (RETS)とは何か

Understanding Real Estate Listing Data: The Difference Between IDX and RETS

 

Incorporating MLS listing data on a real estate agent’s website can be fairly complicated, so it’s no wonder we get a lot of questions about the difference between IDX and RETS. But before we get into that, a brief vocabulary lesson is in order. (Don’t worry: We’ll leave out as much of the tech speak as we can.)

MLSの情報を業者のサイトに導入するのは中々複雑なものです。ですから良くIDXとRETSの違いについて質問を受けてしまうのは不思議ではありません。それをお話する前に、単語練習をしましょう。(ご安心ください技術用語はなるべく避けます)

First, let’s define some of the relevant terms:

初めに関係する用語を定義します。

IDX (Internet Data Exchange) – This refers to the data exchange between an MLS board’s database and a realtor’s website. Sometimes, IDX is used to refer to a specific method of data exchange, most of which are outlined below. IDX has to do with public MLS search, and is viewed as a form of advertising. The listings that are displayed here are only those allowed by other participants, but almost always includes the vast majority of the MLS database.

IDXは、MLSのデータから、一部の許可された情報を、広告として、他の業者のウェブサイトに一般向け広告として掲載させたりすることが出来るデータやり取りの(つまりは流通の)概念と仕組み(とそのルール)のこと。参加業者が許可した情報だけが表示されるが、大抵大多数の情報が表示される。(訳注:大抵は、MLSからのページを業者のサイトに埋め込む形で表示されたりする)

RETS (Real Estate Transaction Standard) – RETS is used to give brokers, agents and third parties access to listing and transaction data. MLSs nationwide are moving to adopt RETS as the industry standard because it drastically simplifies the process of getting listing data from an MLS to an agent’s site. Key benefits include customization of how the listing data is displayed, fresh listing data (updated as often as every hour), and content added to the site (SEO – search engine optimization). The one main drawback is that the data feed is impossible to use by itself. In other words, you need a trained professional or additional software to make sense of it.

RETSは、業者などがMLSの情報にアクセスできる仕組み。全国のMLSはRETSの採用に業界標準として移行している。というのも、RETSを利用すれば劇的にMLSから業者のサイトへデータをやり取りするのに効率的になるからだからだ。キーとなる利点は、物件情報がどのように見た目表示されるかカスタマイズできること、毎時更新されるなどの新鮮な物件情報、埋め込みでなく、サイトに追加されるのでSEO的にも、ということ。唯一の欠点となるとすれば、データ自体は、加工しないとそのままでは表示に使えないこと。つまりソフトウェア的に処理する必要がある。

FTP (File Transfer Protocol) – Implemented before RETS, this is a standard protocol used to transfer files from one host (the MLS) to another (the agent). The listing database on the agent’s website is synchronized with the MLS database, and updates usually once or twice a day. FTP also has the benefits of SEO and customization, though the data is not as recent as it could be with RETS. It’s very important to note that there is no set standard with FTP between MLSs. Since each MLS has their own unique way of doing things, using FTP can cost a whole lot more.

FTPは、RETSが出来る前に使われていた、ファイルを転送する為の規格。物件情報は、大抵一日1度か2度、MLSのデータベースと業者のウェブサイトのデータはFTPを使ってファイルによって同期される。FTP方式もSEOやカスタマイズできる利点はあるが、RETS方式より新鮮さで劣る。とても重要なポイントは、MLS同士のFTPを使った場合の標準仕様は無い。なので、MLS同士のやり取りではとても面倒な手続きとなる。

iframe – An iframe is a MLS search window/HTML element that agents can put on their site. Most often, these are provided by an MLS for free, and are very easy to use. Implementation requires little more than copying/pasting a link into the site. Though agents commonly refer to iframes as IDX, they’re not the same, as no data is actually transferred. Content is not added to the agent’s site, and customization is limited. This means that in addition to being unattractive, the agent’s website doesn’t receive any content. There is no SEO benefit.

iFrame(アイフレーム)ブラウザ内に他のサイトのページを埋め込む一般的な方式。MLSの検索画面を業者のサイトのページ内にHTMLのタグで簡単に埋め込んで表示させることが出来る。大抵はMLSが無料で提供しているサービスとなる。実際のデータのやり取りはなされない。カスタマイズできない、

After reading the definitions above, you’ll understand that RETS is actually an option for IDX, along with its precursor, FTP. But now that you know, why should you care? Well, the answer to that depends largely on what you’re looking for.

上記の定義をご覧になれば、RETSは、IDXの一つの選択肢なのだ、ということ、そしてRETSは次世代(つまりFTPの後任にあたる)のだということも。さて、これが分かったとしたらどうすべきでしょう。当然、あなたが何を探しているかによります。

Let’s assume that all you want is an MLS search feature for your website, and also assume that design and content are not important. You might think that because of the ease of use and low cost (free), the iframe would be a good choice. But it’s not quite that simple. Sure, you’ll have the search feature built into your site–but does it really get the job done? Remember that content is king, and sites with more content rank higher than those without it. Since iframes don’t actually add any content to your site, the Googles and the Bings of the world don’t have much to judge your site by. Now, compare this with a site that actually has listing data (content) on it. Imagine hundreds, if not thousands of pages of quality listing data in the market you serve vs. one “Listing Search” iframe. The fact is that sites with content will rank higher than your own, leaving you at the bottom (and unseen) part of the list.

もし、ただ単に、MLS検索機能を自社ウェブサイトに付けたいのであれば、そして、デザインとコンテンツはあまり重要でない場合、iFrameを使うのが良いでしょう。ただし、そんなにシンプルな話ではありません。検索機能はウェブサイトに付きました、ただそれで効果はあるのでしょうか。「コンテンツが肝」なのを忘れてはいけません。コンテンツのあるサイトがランクで上になります。Googleなどはコンテンツの質量で判断します。それだけで下にランクされます。

Now, if content is something you want, it appears that there are two options to choose from–FTP and RETS. Both will improve your ranking on search engines, but RETS will provide you with data that is both more accurate and easier to work with. Why? Well, the FTP standard forces you to download the entire database of listings in bulk each time you want to update your records. This can be incredibly time consuming, especially when it comes to MLSs with many listings. Because of this, with FTP, listings are sometimes only updated once per week.

さて、もしコンテンツが大事ということであれば、FTP利用とRETSを利用する二つのオプションがあります。両者ともコンテンツとして利用できます。しかし、RETSは正確性と利便性を提供します。なぜかって?FTP方式は、データベース情報を丸ごとダウンロードして、毎回転送して、丸ごと入れ替えて更新しなければならない仕様になっているからです。FTP(ファイル転送プロトコル)ですから。これは、とてつもなく時間浪費で、一週間に一度ぐらいしか更新されません。

With RETS, on the other hand, listings are downloaded in more manageable segments, and only those that have been recently added or changed will need to be updated. This means that the listings can be refreshed more regularly, giving site visitors more current listing data.

RETSでは、より断片的に更新された情報のみ、といった扱いやすい形式で取得できます。つまり、より定期的に更新できるので、新鮮な情報をユーザーに提供できます。

As MLSs across the country continue to adopt the RETS standard, the industry will enjoy both its technical and practical benefits. Techies will have a much easier time setting up their solutions, and real estate professionals will be able to provide significantly more value to their clients.

全国のMLSは、RETSを取り入れ、業界は技術的利益と実際的な利益を得ています。技術屋はよりすばやく開発でき、不動産業者はより高い価値を顧客に提供できるのです。

 

placester.com

 

 私が書くよりも技術用語を避けて上手く説明してくれてますので、訳してみました。

 

次回は、RESOとRETS Web APIについて